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息子、悠平には妹が一人いる。
名を裕香と言う。
この春から中学生になる。
この子は昔から悠平を嫌っていた。
悠平が眠りについたとき、裕香はやたら怯えていた。
まだ、十歳にも満たなかったのに、私ら親に「お兄ちゃんは死んでほしい。もう目を覚まさないでほしい」とはっきりと言った。
無論、私ら夫婦はこっぴどく叱りつけたが裕香は、泣きじゃくりながら「お兄ちゃんなんて、いないほうがいいんだ！」と叫んでいた。
何かあったのか？と問い詰めても裕香は、首を横に振るばかりだった。
裕香は、悠平が眠る病院に来たことはない。
未だに眠り続けている兄のことを心底嫌っている。
何かしらあったとは思うが、裕香は口を割らない。悠平は眠り続ける。
妻がたまに裕香の話題を悠平の前ですると、悠平はやはり薄ら笑いを浮かべる。
この五年で、私の悠平に対する思いは親でありながら「気持ち悪い奴だ……」とそう思うようになってしまった。
悠平……。お前は一体どんな夢を見ているんだ？
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