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生粋の日本人顔の瑛海とは正反対に肌は白く、ほんのりピンク色の頬にアッシュブラウンの短髪とぱっちり二重の大きな瞳。高い鼻梁の下にはぷっくりとしたアヒル口の唇がついている──つまり、かなりの美少年だ──。
こんなにも印象的な相手をなぜ自分は覚えていないのか、瑛海には至極難解だった。
「なんで俺は、君とココに寝てたのかなぁ? そして、ここはどこ?」
「忘れちゃったの? 昨夜ライブの打ち上げで、瑛海が俺のことお持ち帰りしたんだよ。あと、ここは俺の家ね」
またもニッコリと可愛く微笑んで矩は首を傾げた。いや、可愛いけど可愛いくねーからな、と瑛海は謎の抵抗をする。
「うーん、全然思い出せないなぁ……ハハ……」
瑛海が矩に合わせて作った笑顔は、無理があったらしく頬がビクビクと痙攣している。
「昨夜、瑛海がね、俺のこと可愛いね、可愛いねって……、家行っていい? ってしつこく言うから……」
矩が最後にモジモジと照れ出したので、瑛海は危うく再び絶叫しそうになった。
男が恥じらっても何にも可愛くねーからな、と喉まで上がってきた罵声を必死に飲み込んで「そ、それで?」と、口の端を引き上げた。
「──まさか……本当に本当に、なんにも覚えてないの?」
矩はさっきまで赤らめていた頬からいきなり色を無くした。
記憶がない自分に責任を全部振るのかと、瑛海は怪訝な顔のまま矩と目が合う。
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