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後ろ手でショーツをこっそり床に落とすと、瑛海は背を正して深く頭を下げた。
「……してもいいよ?」
「へっ?」
「お風呂入ってきたし、ちゃんと綺麗にしたよ!」
どこを? 何を? いや、聞きたくないと、心の中で喚き散らして瑛海はかぶりを振る。
「いや、ダメだよっ大事にしないと! 会ったばかりの男に体を赦すなんてしちゃダメだ! 女……の子でなくても、人として、そう、人として!」我ながら名言が出たと瑛海の顔はドヤ顔だ。
「瑛海が言ったんだよ……俺のこと、可愛いって、好きだよって……何回もスカートの中に手入れて来たんだよ……」
瑛海はその情景を余裕で想像できるが、恐ろし過ぎて敢えてしなかった。
「……スカート……そうだっ、スカートっ、お前なんで女装なんてしてたんだよ! さ、詐欺だろっ、こんな、女のフリして色仕掛けでっ!」
「瑛海が言ったんじゃん! 俺が女の格好のままだったらヤッちゃうって!」
「──へ?」
「俺のバイト先に呑みに来て、俺くらい可愛いかったらヤッちゃうって……女装してたら全然セーフだって」
「オ前……ノ、バイト先? 女、装……?」首の骨が折れるかと思うほどに傾げてみても瑛海は思い出せない。それに痺れを切らした矩が強目に声を発した。
「男の娘バーだよ!」
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