124人が本棚に入れています
本棚に追加
喧騒を抜け教室にやってきた須藤は前方で船を漕ぐ頭を見つめて思案していた。
今朝は入学式の為朝練もなかったのだが、中村は自主練すると言って
一人、道場へ足を向けた。
余程疲れたのだろう。
最近は動向を探っているのか見守っているのか正直分からなくなりつつある。
余りにも無防備で見ているこっちがヒヤヒヤするし、話していても何かを探っている様子も見受けられないどころか自分の事を誰にでもベラベラ話しやがる。
本当にごくごく一般家庭の人間なのだ。
空手部ではそんな空気の緩さに好感を持たれたのかマスコット的存在になりつつあるが
「意外と金持ちも気さくな奴多いなー」とのたまっていた。
おかげで俺も最近じゃ気が緩みっぱなしだ。
中村の前で熟睡してしまう程……そしてそれが心地よくなってきているという事実に
俺自身が驚愕していると教室の戸が開かれた。
最初のコメントを投稿しよう!