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「もう、どうして出ないの」
耳の奥に繰り返しぶつかってくる、単調な電子音に、思わず悪態をつく。
目の前が狭くなっていくのを感じて、壁に右手をつき、寄りかかって踏みとどまった。
「行かないと」
苛立ちと不安を押さえつけるべく、言葉にして吐き出した。さあ動け。散らばった意識を統一して、準備に取り掛かる。
外に出て、車に乗り込もうとロックを解除するが、そこでふと立ち止まった。すぐに不安が鎌首をもたげて、のしかかってくる。鼓動が落ち着いてくれない。
頭を振って、ロックをかけ直した。運転はやめておこう。
ガレージを飛び出し、早足で歩き始める。
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