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「なに、獣人の子供だと? それは妙だな。男はワハシェくんだりから、わざわざ幼子を攫(さら)ってきたというのか。だがそんな真似に、どんな理由があるというのだ」
「それを私に訊かれても困る」
頭で整理するため口にしたことを、ブランは至極真面目にそう返す。おまえに訊ねた訳ではないと言ってやりたいが、今は声を荒げては思考から情報が抜け落ちてしまう。
やれやれと頭(かぶり)を振ると、ひとつため息をつきウヴェーリが入手した情報をリークする。
「クティノスにグレースが潜伏していることは、ウヴェーリの調べで了得している。男が向かう先はクティノスで間違いない。だが連れの幼子やらが気になるな」
「そのことで、ひとつ思いあたったことがある。ティグリス、おまえの腹心、ウヴェーリだったか。確か彼は、ワハシェの出身ではなかったか」
「ああ、そうだ。それがどうした」
「これは私の見解で、しかも推測の域も出ないのだが……」
またか。
どうしてこいつは、奥歯に物が挟まったような、焦れったい言い方しかできんのだ。
「どうした、いいから早く言え」
「突拍子もない考えだ。いいか、怒らず最後まで聞けよ?」
「ああ、了解した」
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