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故習的なものの考えだと言われるかもしれんが、ルーと命を分かち合い生涯をともにするのだ、いづれ華燭の典は行いたいと思っている。
まあ俺がグランディーの者どもに公としたいだけだが……。
因みに俺が身を固めたことを、ブランが大そう喜んでくれた。秘かに俺たちを祝う宴を宮殿で催すと、我ことのように張り切っていたが、そのことはまだルーには話していない。
質素な性質であるルーは、城の煌びやかな席では心落ち着くことなどできんだろう。この旅が終わるまでは、少しの気重さえ感じさせたくはない、当面のあいだは黙っているつもりだ。
ルーは幾星霜と孤独に生きてきた俺が初めて得た伴侶だ。
来し方には共に生きたいと望んだ者がいたが、寿命という括りから抗えるわけもない。
ひとつの命など呆気ないほどに脆く朽ちていく。いくら輪廻転生を望もうと、俺を絶望の淵へと追いやるだけだった。
だがルーの裡には、俺が分け与えた心の臓が脈打つ。俺が鼓動を止めんかぎり、またルーも同じく永久を生き抜くのだ。
俺のまえで鞍に跨る小さな温もりを肌に感じ、泉のように溢れる愛しさに心震わせる。
ある意味、時を統べる伴侶を得られたのは、ナミルの存在あってのことだ。それがルーの半死半生のうえで成り立つとは、なんとも皮肉なめぐり合わせではあるが。
ともあれルーを喪う恐怖を嫌と味わい、初めて己が想いを悟ったのだ。この幸運に感謝せし、一生を大切にしてゆきたい。
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