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act.5 運命の輪
『ルーさんに酷いことはなさらないで下さい!』
『私だって――……こんな真似、したくはなかったわ。だけどナミルに逆らえば、私たちは生きてゆけない。仕方がなかったのよ!
けど、もとはと言えば、この子が……侍女の分際で、ティグリス様の寵愛をひとり占めなどするから。この子さえいなければ、私たちは追い出されずに済んだのよ』
『断じてそのようなこと。ルーさんは、決して主のお心をひとり占めなど、あなたが思うようなことはされておりません。そうではなく、主がルーさんを見初められたのです』
『そんなの、体のいい言い訳よ。ティグリス様の心を奪ったのには、変わりないじゃない!』
『あの、差し出がましいようですが……私もルーさんは、主が仰っていたような方だとは思えません。ルーさんとお話をして、彼の純粋で穢れのない優しさに触れました。美しい心の持ち主だと思います』
『何よ、あなた侍女の分際で、こんなの子の肩をもつの!? いったい、どういうつもり――』
『ふたりとも、おやめ下さい! ルーさんが目を覚まされてしまいます』
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