act.6.5 そして、また。

14/21
990人が本棚に入れています
本棚に追加
/358ページ
「えっ、ディア姉さん、どこか具合がよくないの?」  ディアの腰に貼りついていたルーが顔を上げ、見るや蒼然として姉の体調を案じる。 「ええ、産後の回復が芳しくなかったのだけれど、もう大丈夫」  然るべきは産後の体調不良ではなく、母体にかかった負荷であろう。なにしろ人間とのハーフを身ごもったのだ。  いくら産褥期(さんじょくき)を過ごしたとはいえ、ふたたび以前のような体力が戻ることはないだろう。ともあれ命にかかわらずに済んでよかった。 「ディア、どこもおかしなところはないのか。ちゃんと検診は受けているのか」 「はい。オーウェンが私に専門医を探してくれましたので、定期的に検診を受けております」 「そうか。おまえの身体はもう自分だけのものではない、赤子のためにもしっかりと養生しろ。なにか不便があれば遠慮なく俺に言え」 「お心遣いありがとうございます。うふふ、ティグリス様ったら、すっかりとお優しくなられましたこと」  俺の顔を見ながら笑うディアにぐうと唸り、なんとも気まずく居た堪れない気持ちとなる。
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!