恋人としての非日常

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だって……やっぱり、どこかで不安だったんだ。 こいつの中で、『江波さん』っていう存在は大きすぎて……俺なんて、男だし、子供だし……一生敵わない……そう思ってた。 本当は……まだ好きなんじゃないかって…。 月山薫を、信じてないわけじゃない。 でも、それくらい、俺にとって『江波さん』は完璧な人で…。 月山薫にとっては、特別な人で……。 彼女に実際に会って話してみて…すごく魅力的な女性で、その人柄の良さに……俺なんかじゃ、月山薫を幸せには出来ないって、痛感させられた。 そんな『江波さん』は、完璧な人で……すごく……俺には、すごく怖い存在だった。 いつも月山薫の心を占めているのは、『江波さん』で、この人がいる限り、俺は誰よりも近くに寄り添う事が出来ても、常に『江波さん』の次だと思ってた。 それでもいいと思ったのは、俺自身…。 だから、月山薫がくれる『好意』が、例え『一番』じゃなくても仕方ないと……本当は心のどこかで自分を納得させていたんだと思う。 なのに……。 「んだよ。照れたと思えば、怒るしよ。今度は泣くのかよ?忙しい奴だな、お前」 呆れたような口振りをしながらも、俺の頭を撫でる月山薫の手は、とても…切なくなるほど優しい。
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