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1ターン目 新人社員のゾンビAです
「てめぇら今日も腐ってるかぁ?俺ぁ今日もいい腐り具合だっ!!各自ぃ、体の点検後ぉ、持ち場につけっ!!解散んんんっ!」
こいつ舐めてんのか?ってか、俺の上司なんですけど?
口には出せねぇのがぁつるぁいぜ、全く。頭ん中で真似してみても、ダメだ。ゾンビもキャリアが立派になると活舌が悪くなるらしい。将来、自分もあんな何言ってるか分らんような言葉しか話せなくなる日が来るのか。これがいつまで続くか分からんゾンビライフの洗礼か。
アンデット社の王都エリアマネージャーである良い具合に腐った上司様は、ドラゴンゾンビに乗り次の職場へ行こうとしている。昨日の研修で教育係の女ゾンビが話していたのを思い出す。管理職のみが許されたドラゴンゾンビの使用。ドラゴンゾンビのお陰で、死亡率が格段に下がり、下位のゾンビを部下として使役する権利も持っているらしい。あれが偉い奴なのか?俺には口と脳が腐って呂律が怪しい、そこらの墓場にいるゾンビと大して変わらんように見えるが。
なんでゾンビなんかになっちまったのか。後悔しても後悔しきれない。ゾンビがこんなに狡猾な魔物になっているなんて知らなかった。
強いられている環境下の俺は、体の欠損具合を点検表の上から順に入念に調べていく。
ゾンビは何も考えず、恐れもなくただ人を襲う厄介な存在?そんなわけない。人類の発展とともに、魔物社会も秘密裏に発展していた。このご時世の魔物は、知能を持って徒党を組む。
新人ゾンビ達は初日の研修でそう習う。
今のゾンビは自我を持ち、組織的な規律を保てるように作られる。しかし旧世代の先輩ゾンビのほとんどは、自我を失っている。ただ、歩く、食べるしか行動ができず、今では会社の窓際社員としての存在でしかない。昔はそれで人と渡り合っていたらしい。自分が人として生きていた頃の記憶でも、ゾンビは他の魔物と違い、魔法や攻撃力の高い物理攻撃は仕掛けてこなかった。ただ噛みついてくるだけ。それでも、場合によってゾンビ感染したり、毒状態になるため厄介ではあったが。僧侶がパーティメンバーにいるか、聖水があれば余裕で勝てる相手ではあった。足止め程度なら、体を壊す攻撃でも十分。数が多くなければ余裕で対処できる雑魚モンスター。
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