6ターン目 新人研修:最近のゾンビ傾向と対策について

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「かみ砕いて飲み込むと、一瞬で酔いが醒める薬だ。それから、酒を飲む前に目薬も渡す。俺が精製した、即席魔眼薬だ。効果は半日。俺も使ってる薬だから安心しろ」  安心ねぇ。こう、つぎつぎと得体のしれない薬を渡されてもなぁ。聞き馴染みのない言葉が聞こえたな。 「即席魔眼薬って?」 「一時的に人と魔物を見分ける能力が目に宿る効果がある。これも貴重な薬だ。特許も申請済みだ。認められれば、俺の研究も日の目を見るだろう。」  どうやら貴重らしい薬を試してみようとしたが止められた。 「この薬は一時的に魔物に近い能力を使用者に与える。だから、見分ける能力を一時的ではあるが身に宿る。欠点は、日を浴びると、目が溶ける」 「あっぶねぇっ」  こいつ、なんて劇薬を目に入れさせようとしてんだ? 「だから、クエスト開始時は片目だけに指しておけ。日が昇ったら眼帯をつけて目を守れ。不安なら、1日眼帯を付けておけば、確実に効果は切れてる。それから眼帯をとれば問題ない。劇薬も使い方を間違えなければ便利なものになる」  片目だけ目薬を差す。しばらくは歴戦の冒険者風になれそうだ。酔っても奥歯の薬で酔いが醒め、相手を見れば人か魔物かも見極めれる。これ、おっさん一人でもできるんじゃないのか?生態調査。 「俺が囮になる意味は?おっさん一人でも出来るだろ?あんた喧嘩強そうだし」 「俺もそう思って試したんだが、この成りだ。人も近寄らん」  ああ、成程ね。こんな筋骨隆々のおっさんが泥酔する姿を見て優しく介抱するやつもいないだろう。ゾンビも確かに知能があるらしい。 「おっさんは、俺が捕まるまで何してんだ?見てるだけ?」 「俺は、お前の後を尾行してタイミングを見て助けに行く。俺も戦闘の参加する」  学者しながら魔物と戦闘してるから、体がごついのか。 「戦闘って殴って戦うのか?」 「いや、魔法で戦う」 「なんで肉弾戦じゃないんだよ?どう見ても肉弾戦する体だろ、アンタ」 「この肉体美は趣味の筋トレの成果だ」  結局は頭脳派なのか?脳筋じゃないのかよ。まぁクエスト内容も分かったし。あとは、夜になるのを待つだけか。 「まぁとりあえず、よろしくなキールのおっさん」  クエストの契約成立ということで、依頼人であるキールのおっさんと固い握手を交わして帰った。
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