5ターン目 立てなくなるまで酒を飲むお仕事です

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5ターン目 立てなくなるまで酒を飲むお仕事です

 いつの間に。 「お前、このクエストを受けたいのか?なら、今から詳細について話す。付いて来い」  不愛想なおっさんは、俺の返事なんて待っちゃくれない。そのまま、ギルド2階へ向かいながらクリスに。 「嬢ちゃん!2階の商談室借りるぞ。予約は取ってある。」 「あ、はいっ!終わりましたら、一度、受付までお越し下さい。」  急にデカい声で話しかける奴ってホントなんなの?俺は、こういうタイプのオヤジが苦手でクリスと一緒に体が強張った。自分の顔が情けない表情になっているような顔の引きつりを感じるから辞めて欲しい。 「クエスト開始は王都の繁華街。決行日は成人の儀を行う1月7日の夜中から日が昇るまでの8時間。その間、酒を飲めるだけ飲んで介抱する人間が現れるまで飲み続けること。酒の飲みすぎで死ぬこともあるため、報酬は高くしている。ここまでは、先ほどの少女から聞いたな?」  このゾンビの生体調査とは思えない、かけ離れた内容を話し続けているオヤジが今回の依頼主らしい。学者風の服装。ビン底眼鏡から見える眼光は年の割に鋭さを感じる。筋肉質な印象を受け、荒くれ稼業の男がそこらの学者の服をはぎ取って着ただけに見える。本当に学者なのだろうか? 「俺は駆け出し冒険者のジール。あんたが、依頼主?」 「そうだ。俺はアンデットについて研究している、キースだ。駆け出しでもできる仕事だから安心してくれ」  全然安心できないんだが。さっきからゾンビのゾの字も出てこない。酒飲んで誰かに介抱されるまで飲んだくれていればいい。そればっかだ。酒は強くも弱くもないから、介抱されるほど飲んだことがない。 「酔ったフリではダメなのか?」 「それでも構わんが、演技に自信があるのか?ないなら、飲んでもらう。吐いて吐いて吐きまくって、立てなくなるまでな」 「どうして飲ませたがる?ゾンビはどこいった?話が見えてこないぞ」  話の本題に進まない。隠し事があるようにも思える。 「お前は秘密を守れる人間か?ここから先の話は他言無用だ。聞いたら必ずクエストを受けてもらう。この守秘義務の契約書にサインをしてからしか話せない。」  一度、冷静に考えてみることにする。かなり危ない仕事のように思えてきた。守秘義務のサインなんて書いたことも聞いたこともない。素性が見えない男だ。
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