5ターン目 立てなくなるまで酒を飲むお仕事です

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そもそも、なんで俺みたいな駆け出し冒険者がこなせるクエストが50万ゼニー以上を貰える?書類にサインをするのは早すぎる。だがしかし、報酬は魅力的だ。 「駆け出し冒険者でも出来るクエストで50万ゼニーは気前良すぎないか?たかが生態調査の手伝いだろ?今までの説明では、サインできない」 「手練れの冒険者より、お前みたいな若造じゃなきゃできないこともあるってことだ。ギルドは年齢制限を明文化してはいけない約束になってるからな」  若い人材が欲しいのか。俺は冒険者になって数年だし、見た目も町人の同世代と大して変わらない。たまにそういう条件が入るクエストは確かにある。今までやったクエストだと、 町人のフリして郊外に出没する盗賊を捕まえる協力とかあったな。少しは納得できた。だが、 「ゾンビは繁華街にはいない。ゾンビは郊外にいるもんだろ?酒飲んだってゾンビには会えないぞ、おっさん。もしかして、ゾンビの生態調査は初めてなのか?俺がゾンビを見かけたことある場所、教えてやるよ」 「守秘義務のサインが先だ。そして、俺はゾンビの生態調査は初めてじゃない。どこにゾンビが出没するかは把握済みだ」  ?ということは、このおっさんの言葉が本当なら、もしも本当だったら、と嫌な想像をした。よせばいいのに、失言をした。 「つまり、ゾンビは繁華街に出るのか?」  おっさんの目の色が変わった。逃げたほうがいい気がして席を立とうとしたら、肩を掴まれた。 「おい、兄ちゃん。守秘義務のサインしてもらうぞ?察しがいい兄ちゃんには悪いが、手遅れだ。クエストを受けて貰わないとギルドに申し立てて違約金を出してもらう。1000万ゼニーだ。」  腕力で勝てそうにない。肩から伝わるおっさんの手の力は、肩回りの肉に指先が少し食い込み痛い。掌が熊みたいにデカい。1日研究室に籠る学者とは、到底思えない手をしている。木こりが漁師の方が向いてんじゃないのか?  力で勝てない。違約金、1000万。新手の詐欺か?違約金詐欺。頭の中で色々と考えるが。 「違約金高すぎだろ?自分で言っといて、そりゃねぇぞ。俺もギルドに訴えてやる。偽物なんだろ?学者なんてのも。どうみても学者には見えねえ。」 「口が滑ったのは悪かった。でもよ、これでも、れっきとした国お抱えの学者だ。ほら、これを見ろ。」  王家の紋章が刻まれた身分証を首から外して見せつけられた。マジだ。
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