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五、
「これからどうなさるのですか」
忍を独り残し、与四郎とお沙は自分たちの長屋に戻ってきた。
ふたりには、忍を引き取ることはできなかった。
あのまま放っておいたら、恐らく死んでしまう。
しかし、引き取れない――
忍は、吉井との想い出が詰まったあの家から離れたくないのだった。
忍の身のことを考え、週に何度かは様子を見にゆくことにした。
与四郎たちにも仕事はあるため、毎日は通えない。
吉井と忍の間にも、子どもはいなかった。
吉井が亡くなってしまったいま、与四郎は自分で材料を調達しなければならなくなった。
筆の材料は、すべて吉井が用意してくれていたため、他に頼るあてが無い。
与四郎の家は、商家ではない。
与四郎は困ってしまった。
材料は、すこしなら予備がある。
与四郎は、吉井がどこから材料調達してくるのかを多くは知らなかった。
商いの傍ら、材料を仕入れてくる、ということだけを聞き、与四郎は筆づくりだけをした。
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