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六、
翌朝、お沙は髪の違和感で眼覚めた。
髪がわずかに引っぱられている。
「――?」
うっすらと眼を開けると、与四郎が顔を覗き込んでいた。
そして、お沙の髪を撫でていた。
「お前の髪は美しいな――」
「与四郎さん?」
お沙が声をかけると、与四郎は手を止めた。
「あ、いや――忍を頼むぞ、お沙」
これだけ言うと、与四郎は身支度を整え始めた。
与四郎が居なくなってしまってから、お沙は自分の髪に触れてみた。
「―――」
細い指に絡む黒髪を、ぼんやりと見つめる。
「埃でも付いていたのかしら」
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