第一章 夫婦

8/18

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
   六、  翌朝、お沙は髪の違和感で眼覚めた。  髪がわずかに引っぱられている。 「――?」  うっすらと眼を開けると、与四郎が顔を覗き込んでいた。  そして、お沙の髪を撫でていた。 「お前の髪は美しいな――」 「与四郎さん?」  お沙が声をかけると、与四郎は手を止めた。 「あ、いや――忍を頼むぞ、お沙」 これだけ言うと、与四郎は身支度を整え始めた。 与四郎が居なくなってしまってから、お沙は自分の髪に触れてみた。 「―――」  細い指に絡む黒髪を、ぼんやりと見つめる。 「埃でも付いていたのかしら」
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加