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「せめてもう少し近ければなぁ」
祖母の家は村の中でも奥の方でバス停からも遠いい。前に父に聞いた話しでは、祖母はこの辺りの地主らしくこの辺りは祖母の土地らしい。
何でも祖母はこの土地の巫女の様な物をやって居たらしく。村に何か不幸が在る度に村を救って崇められる様な立場だったらしい。
しかもそれは比喩的な表現でも何でも無く、土砂崩れから村人を救い出したり、枯れた土地を甦らせたりもしたらしい。特に最近では廃村の危機にあったこの村を、役人を説得し魔法の様に国からも勝利をもぎ取り村を救ったと、村の年寄りが自慢していた。
その為か祖母はあまり家には居ない人で、早くに祖父を無くした父はあまり祖父母との家族としての思い出は無いと言っていた。
金持ち。そんな言葉が浮かぶが実状としてはただ所有しているだけ。いざ相続するとなると何にしても莫大な金が掛かる事から、父としては不要な物だと言っていた。
そんないくつかの事から父は祖母と疎遠になっていた。にもかかわらず祖母は僕の事を受け入れてくれた。それに感謝して居る身としてはこうして一人の時に文句を吐き出すしか無かった。
そんな訳で僕は少しの不満を抱えてトボトボと畑の中を帰るのだった。
「ただいま~。って、あっ!」
僕は思わず出てしまった帰宅の言葉に少しばかりしまった・・・と、思ってしまう。
それと言うのも祖母はここの所具合が悪く寝たきりの為、出来る限り静にしようと思って居たからだ。
「お帰りなさい」
「えっ?」
帰って来ないと思って居た返事に思わず間抜けな声を上げ声がした方を見る。するとそこには僕よりも少し年上に見える黒いセーラー服を着た女の子が居た。腰の辺りまで伸びた艶やかな黒髪。切れ長の目、透き通る様な白い肌、それは今までテレビの中でさえ見た事が無い綺麗な人だった。
「・・だ、誰?」
「あぁ、ごめんなさい。私はお婆様の友人で鏡 鏡子と言いうの鏡子で良いわ」
「友人?祖母の?」
「ふふ、確かに不思議ですよね?でも私本当に貴方のお婆様とはお友達なのよ?」
「は、はぁ?それで、どういった用件で?祖母は今具合が悪くて・・」
「ええ、知っているわ。だから今の内に会って置きたいって春子に呼ばれたのよ」
「えっ?祖母にですか?」
「ええ、春子が呼んでいたわ。来てくれるかしら?」
「分かりました」
僕は鏡子と名乗った女の人の後を追い祖母の元へ行く。
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