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もうすぐ、彼が小説を書き始めて四年が経つ。
親からの仕送りも止まってしまうのではないか。大丈夫なのかと僕は彼に訊いてみたりもしたが、彼は出会ったころと変わらぬ無邪気な笑みを見せるだけで、何も言わなかった。
ある時、珍しく彼の方から話題を振ってきたことがあった。
「朱川史郎という作家を知っているかい?」
「ああ。そのジャンルの中じゃ特に有名だからね。かといって、よく知っているわけじゃないけど」
朱川史郎は昭和期に活躍した幻想怪奇物を得意とするシナリオライターだ。ある時、特撮系に強かったプロダクションに朱川は持ち込みをした。本来なら突き返されるなりはぐらかされそうなものだが、ちょうどその頃ネタも出尽くしたと考えていたそのプロダクションは、たいした期待を向けずになんとなくその原稿を読んでみることにしたという。それが朱川のデビューのきっかけとなった。
朱川の描く幻想怪奇はシナリオの段階で独特の美を思わせる世界観であり、これなら特撮を活かしたドラマ作りができるとプロダクションが興味を示したのだ。
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