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「あら、忘れてるの?お隣の天野さん。あちらも同じ二人兄妹でよく遊んでたでしょ。あの事故までは毎年必ず夏休みにあちらさんの家族とうちの家族とで一緒に旅行に行ってたじゃない。あの年も天野さんちとうちとでシンガポールに旅行に行ったのよ。楽しい旅行だったんだけど、その後すぐに天野さんのお父さんが転勤で家族で引っ越すことになって。家族全員で勤務先に向かう飛行機が事故で墜落して……亡くなられたのよ、みんな」
バレー部の練習が終わると、私は友人との雑談もそこそこに学校を出た。
今日もきつい練習だった。空調の無い蒸し風呂のような体育館でひたすら自分を追い込んで。それでゲームを楽しめるなら良いのだが、恐ろしいことに私は入部して一度も楽しいなんて感じられなかった。こんなこと真剣にやっているチームメイトにはとても言えない。薄々感じていたが、自分は向いていないのだろうと思う。そもそも中学でバレー部に入ったのは、幼い頃からバレーが大好きだったからのはずなのだが。私自身は思い出せないが昔はテレビで試合がやっていれば、画面に食いついて離れなかったと両親も言っていた。それなのに、どうしてだろう。
考えても憂鬱になるだけなので、無理に振り払い家に向かうのとは反対方向の道に入る。きっと兄はまだ図書館で勉強をしているだろうから、それを拾って帰ろうと考えたのだ。もともと昨晩の夢のことについて文句を言いたかったのだ。朝は母が居たせいで言えなかった。
加えてあの時母がした「天野さんち」の話も気になる。
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