理想の箱庭

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 床も壁も天井も、一面真っ白な空間。  息の詰まるような閉塞感。  生温い空気が行き場を無くして閉じこめられ、窓なんて見当たらない。  外界との繋がりは真っ白いドアが1つだけ。今は閉ざされている。  ここは俺の部屋だ。  部屋の中央には机があり、親指ほどの大きさの、白く無機質なヒトガタが沢山並んでいる。どれもこれも代わり映えは無く、チェスの駒のポーンのような、特徴も無ければ面白みも無い形状をしている。  そんなヒトガタが規則性も無く机に並べられている。いや、規則性が一切無いわけではなく、あえて述べるとするならば、上から針が刺してあり、全て立っている……と、表現できる事くらいか。  俺は、机の前に置いてある椅子に座ると、その位置から離れたところにある1体を迷い無く掴み取る。  そして、真っ白い部屋の隅に向けて投げ捨てた。  すると、どこからともなく紅の炎が燃え上がり、瞬く間に白のヒトガタは炎に焼かれて真っ黒の炭になる。  あの後、ごめんなさいの一言でもあれば助けてやったのだが……俺に恥をかかせるなど、いけないオモチャだ。
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