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「何かこぼしたのかな?」
そう思っても警察ではないアトリエが鑑識や科学捜査でそれらを見つけることはできない。匂いのことは頭の片隅に留めておき、アトリエはマンションの部屋を後にする。
管理人の部屋に鍵を返しに行ったとき、アトリエは管理人にお願いする。
「すみません。監視カメラの映像とかってあります?」
日暮探偵事務所の職員証の持つ力は想像以上に強いみたいだ。警察のような国家権力を持つ組織でなければなかなかやさせてもらえないことや、手に入れられそうもない情報が次々と手に入れることができる。だが、それはあくまで世に出回る日暮園という人物の仮の姿であるということを世間が知らないからだ。
「このマンションのあの部屋への出入りがあったのは死亡推定時刻の午後八時の約六時間前の午後二時だけか」
被害者宅に一人の女性が訪ねてきているのがカメラに映っている。だが、その人物は一時間もしないでこのマンションから出て行っており、犯人や容疑者とするには死亡推定時刻と大きくずれているこの時間差を何とかしなければならない。
「警察はこの人物が誰なのかを特定できていないけど、死亡推定時刻からかけ離れているために重要視できなかったってところかな」
サングラスに帽子を着用している女性。高級そうな靴と衣服、帽子とサングラスで顔を隠した目を引く小太り体型。その外見の衣服は自尊心の強いセレブに似ている。
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