事件捜査

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「はぁ、どうしたものやら・・・」  なかなか事件の核心にたどり着けるような情報が手に入らない。なるべく日をまたいでしまうことを避けたいアトリエだが、こうなれば二日目突入の可能性も出てきた。 「でも・・・あの匂いだけは共通していたんだよね」  一人目の被害者のマンションの部屋で彼女の気を引いたかすかな匂い。それがなぜか他の二人の家にも存在した。 「警察の資料に無い匂い、それと来客が今のところの共通点ね。家の人も臭いには気が付いていなかったみたいだから、もしかしたら犯人も気が付いていないかも・・・」  共通点はあったが、これでは事件解決には程遠い。訪ねてきた来客の外見は小太りの女性、スーツを着こなした男性、オタク系の男性と見事に三種類に分かれている。 「複数犯なのかなぁ? 一人一殺だと同じ犯行でも関連付けにくい」  家族に聞いた話では、スーツを着こなした男性は元上司の被害者に挨拶に来たらしい。オタク系の男性は過去に同じ研究所で働いていた職員らしく、何やら被害者を頼って訪ねて来たらしい。家族は詳しい応対の内容を聞いていなかったので会話ややり取りは知らないと言っているので、詳しい間柄や話の中身はわからないままだ。しかし、両方の家に仕事関係の来客が訪ねてくることは珍しくなかったことから、家族も油断していて詳しく覚えていないというのが現状だった。 「行き詰りそうで怖いけど、やらなきゃ私の給料がなくなっちゃう」  悩みながらも、アトリエの足は次の目的地である大量死した野犬や鳩が見つかった公園へと向かっていた。 「まるっきり関係ない偶然の可能性が強くなってきた気もするけど、そうだと確定するまでやめるわけにはいかないよねぇ」  公園へ到着したとき、断片的ではあるが、気になっている匂いがアトリエの鼻をくすぐる。間違いない。この匂いはこの事件に深くかかわっている。それは確かであることをアトリエは確信した。
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