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「野外で風もあるし雨も降るけど、それでもこの匂いが僅かに残っているのは不思議ね」
風雨に晒されてもまだ残る強力な匂いとは一体どんなものなのだろうか。その匂いの元がわからないアトリエには関係はあることは大方間違いないが、確信ではない以上武器にはなりえないというのが本音だった。
「犬が死んでいたポイントもいくつか回ったけど、そこには匂いが無かったんだよねぇ」
もしこの匂いがこの事件を深く物語っているとしたら、犬の死骸が見つかった各ポイントでそれぞれ匂いがあってもいいはずだ。しかし、犬の死骸が見つかったポイントは何カ所回っても匂いが存在しなかったのだ。
「路地裏や交差点、繁華街に市街地、どこにも匂いが残っていないのに公園にだけは野外で唯一匂いが残っているのは・・・」
考えを巡らしているとき、そよ風が吹いて木々や草花が揺れる。
「・・・土や草花?」
公園の地面に這い蹲って匂いを嗅ぐ。その姿はまるで犬のようだが、アトリエはそんなことは気にも留めずに鼻に神経を集中させる。
「土には匂いがない」
次は公園の中に咲いている花や生えている草木を雑草に至るまで匂いを嗅いでいく。
「やっぱり、植物からだ」
公園の中に断片的に存在する匂いの元は公園に生えている草花が原因だった。
「街中と公園の違いは舗装されたコンクリートやアスファルトの街中、土があって草木が生える公園、うんっ! これに間違いない!」
アトリエの頭の中で一つ、疑問が解消した。屋内では風雨が無い。風通しが悪ければ匂いは残ったままになるのだろう。しかし屋外では風雨が匂いを洗い流してしまう。だが、土はその匂いを雨水と一緒に吸収し、草木がそれを取り入れたのだ。そのため、公園には野外にもかかわらず匂いが残っていたのだ。
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