事件捜査

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「その工場や倉庫の場所ってわかります?」 「え? まぁ、いくつかはわかるけど?」 「教えてくださいっ!」  アトリエは事件解決の手掛かりを掴みかけている。ここで手を抜くわけにもいかない。安里結に詰め寄るように距離を詰めて、真剣な眼差しで頼み込む。 「そうねぇ、じゃあ私のマンションでみっちり授業を・・・」 「しませんっ!」 「誰も玩具なれとは言っていないわ。少し遊びたいってだけで・・・」 「遊びませんっ!」  安里結の提案に対して真っ向から否定の意を述べる。それも即答。 「もう、わかったわよ。それにしても女として自信を無くしちゃうわ」 「先生としてじゃないんですね」  とことん人としても教師としても歪んでいる安里結だった。 「私が昔の同僚に聞いて知っているのはこの三か所よ。他にもあるかもしれないから、別の場所も聞こうと思えば聞けないこともないと思うけれど」  安里結が携帯電話で地図を開いて示した三か所。それは下町の工場、山間部の工場、港の倉庫だった。 「三か所のどこかが事件の核心に繋がっていたらいいなぁ」  次に向かうべき場所を知ったアトリエは自らの幸運を祈る気持ちで自らの携帯電話に地図の場所を登録していた。 「ちょっと、情報提供に価値があったみたいなんだし、私にも事件の内容を少しくらい話しなさい」 「あっ・・・」  考え事に集中していたアトリエは頭の中で事件について短くまとめて話す。捜査をする者としては失格だろうが、情報を得るためのギブアンドテイクはある程度しかたないと自分自身を納得させる。
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