事件捜査

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「いいわぁ。その笑顔」 「え?」  今の今まで真剣な表情で先生らしいことを言っていた安里結。それがまた、変わりすぎているサディスト保険医へと戻る・ 「そんな笑顔の子を鳴かせるところを想像するともう・・・たまらないわ」  サディスト保険医の妄想はとどまるところを知らない。良い子が聞いてはいけないような淫猥な妄想が次々に彼女の口からとめどなく溢れ続ける。 「はぁ、生徒を捕まえていつまで言い続ける気ですか?」  アトリエはこれ以上実のある話ができそうにないと判断し、彼女に気付かれないようにゆっくり音をたてないようにその場から遠ざかろうと抜き足差し足で安里祐との距離を取っていく。 「そうねぇ、女子高生ってシチュエーションだけじゃ飽き飽きだわ。いろんな格好をさせてみるのもいいわね。でもそうなるとあなたは少し細すぎるから似合わないものも出てくるわね。もう少し太らせるのも面白いかも。痩せるのは面倒でも太らせるのは簡単だし、見た目だけならすぐよねぇ」 「・・・え?」  安里結の妄言に何か引っかかったアトリエは逃げようとしていた足がピタリと止まる。そして脳裏をよぎったのはくだらないメールの文章だった。 『コスプレって最高っ!』  その文章を思い起こし、監視カメラの映像、そして被害者家族に聞いた来客を頭の中に思い浮かべる。 「コスプレ・・・衣装替え・・・変装?」  監視カメラで体が映るだけなら女性の格好をしているだけで女性だと思い込ませることができる。実際に監視カメラの女性の目撃情報は無いため、監視カメラに映った表情の見えない女性が怪しいと踏んでいたのはアトリエだけでなく警察も同じだ。  しかし、実際に人と接するとなれば話は別だ。不審に思われないように努めることも必要で、さらにほかの場所を訪れた来客と一致する点があってはならない。そのため、マンションを訪れるときは女装し、一軒家を訪れるときは男のままで印象をがらりと変える手法をとったのだろう。さらに体格は衣服の下を工夫すればある程度変えることができることも重要だ。スーツが似合う男性の時は何かを忍ばせて体格をよく見せ、細いオタク系の男である時は持ち前の痩せた体を見せたのだろう。
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