亜人の少女と事件解決

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「道筋はこう。最初はおそらく新薬の研究開発で被害者となった三人ともめていたのかな。それで権力や地位の関係で失脚。自分の研究者としての地位と未来を奪った三人への新薬開発による復讐、つまり怨恨殺人の始まり。選んだモルモットはどこにでもいる鳩と殺処分される予定の野良犬達。鳩や野良犬達には餌に混ぜればいい。動物が食べるようになるまで研究は続いたけど、それが成功すれば後は簡単。顔見知りなんだから何とでも変装の言い訳はできる。どこかの会社に就職したとか、失脚のショックで女装したとか、ね。それで近づいて後は飲み物に隙を見て混ぜればいい。一応来客だから、お互い用に飲み物が用意されることは珍しいことじゃないからね」  長々と自分がたどり着いた事件の全貌を男に話していく。話を聞いている男は徐々に表情が青ざめていっているようにも見える。 「証拠は? 証拠はどこにある!」 「証拠? ここにあるよ。あなたがここで作ったんだもの。その新薬がここにいるって匂いで強く自己主張しているしね」  アトリエの勝ち誇った表情。警察の追及を逃れられることが確定していた犯人にとって、証拠を処分することなど不必要な行動だった。 「僕の作っている薬品は無色透明無味無臭なんだっ! 実際に犬が嗅ぎ分けることができるかどうかという実験を何度もした! その結果匂いによる識別は不可能だった! 君の言う匂いなんてものはこの倉庫には一切ありえないんだよ!」  男が強く言い放つ。先ほどまでの探り合いのような言い合いは分が悪いと思ったのだろう。話は薬品の方へと切り替えられる。 「じゃあ、どうして私がここに来たの?」 「え?」 「何を手掛かりに? 警察でも掴めなかった犯人の根城がどうして私みたいな一介の女子高生に掴めたの?」  アトリエの勢いに押されている犯人はさらに一歩後退する。しかし、そこで大きな机に当たってそれ以上後ろに下がれなくなってしまう。
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