亜人の少女と事件解決

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「警察は三つの事件が結びついている可能性はあると言っていたけど、それが一つの犯罪だという確証はなかったんだよ。でも私は結びつけることができた。それは匂いがあったから・・・」 「嘘を言うな! そんなことはあり得ないんだよ!」  犯人は机の上に置いてあった透明な液体の入ったフラスコの一つを手に取る。 「諦めたら? 私がここに来ているってことは事務所の所長にも警察にもこの場所に犯人がいるということが伝わっているんだよ」  フラスコを手に持った犯人。その手は震えている。それは今まで自分自身が持っていた絶対の自信がただの女子高生の手によって打ち崩されたからだろう。 「この薬は完璧なんだ! 無色透明無味無臭、濃度次第では巨象だって短時間で仕留められる! 一度体内に入れば助からない! 薄めて使えば死ぬまでの時間の調節だってできる! 皮膚にかかっただけでも効果はあるんだ!」  震える手の中にあるフラスコを高々と掲げて男は言い放つ。それは自供と同じだ。とんだ愚考とも思えるその発言だが、それは自信の絶対的なプライドを保つための保身。自分が作った最高の薬の価値を自画自賛しているが故に出る言葉。彼が無色透明無味無臭という言葉を多用するのも、それこそが彼自身のプライドそのものだからだ。 「遺伝子に異常をきたしてショック死を起こさせるんだ! 生きている動物ならどんな動物にだって効果はあるんだ! さらにすぐに気化してしまうから例えこの薬を落としたりばらまいたりしても被害範囲は限定的なんだ。どうだ、最高の薬だろっ!」  使いやすく、収拾も着きやすい。事故になっても被害は少なく、殺傷力が高い割に安全性が高い薬なのだ。 「ふ~ん、それで?」  男の熱弁にアトリエは全く興味が無い。今の彼女が興味を持っているもの、それはあくまで犯人を捕まえることだけだ。
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