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第4話
それから3日後。私は本当に久しぶりにあのペットショップへ来ていた。
北川さんを見てリゼを思い出してしまい、無性に子犬が見たくなったのだ。
「お久しぶりですね! 中で見ていってください」
外からショーウィンドウを眺めていると、中からこの間の店員が話しかけてくれた。
「ありがとうございます。じゃあちょっとだけ……」
「どうぞ。ご遠慮なく」
今日も仕事終わりで来たから、閉店の8時まで後30分足らずしかない。
「ワンちゃんとネコちゃん、どちら派なんですか?」
「んー、どっちも好きなんですけど、ワンちゃんかなぁ……」
「そうなんですね。あ、この子昨日来たんですよ。トイプードル。抱っこしてみます?」
私は、小さな子犬を胸に抱いた。ぬいぐるみのようだが、暖かい。生きている。
私は――、生きているのだろうか。
あの夜、私は気づいてしまった。隆二に対していつも気を使っていること。そして、恐怖心が消えていないこと。
多分、以前のような愛情は持てていないこと。なのに、別れを切り出せないこと……
「お客様? もしかしてアレルギーがありました!?」
「え……?」
「涙が……」
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