特に何もない日常の始まり

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 目覚まし時計のベルが鳴る。俺は朝も早くから快適に目を覚ました。  一日は朝で全てが決まる。快適な目覚めは俺にとって何より大事なことだった。なので、目覚まし時計も特注品だ。  魔法を込めておける宝珠を用い、設定した時間に目覚めの魔法をかけてくれるようになっている。元パーティーメンバーの魔法使いに特注してもらった。  かなりお金がかかったが、まあなんとかなった。南の砂漠にいるジュエルゴーレム3匹倒したらぎりぎり賄える金額だった。あいつはいざというときのお金稼ぎにホント重宝する。  俺はカーテンを開け、まだ薄暗い窓の外を目を細めて眺めた。白く朝靄も舞っている綺麗な朝の景色だ。  俺は両手を組んでバンザイをし、大きく背を伸ばした。 「うーん! さーて、今日も頑張るぞっと」  俺は掛け声をかけると、ささっと着替えてリビングへ向かった。まだ室内は肌寒い。  震えながら指を一本立てて、俺はレンガ造りの暖炉の前へ行き、その横に積んでる薪の束を指差した。 「フローティング」  一抱えもある薪の束がその一言と共にフワリと浮き上がり、空中を俺の指に従って動きだした。ふよふよと空中を飛ぶ薪の束が暖炉の中に入ると、そこで俺は魔法の効果を解除し、再度違う魔法をかけ直した。 「ファイア」  ボッという音と共に薪の束が何の前触れもなく燃えあがった。乾燥した薪とはいえ、火勢はかなり強い。  束を縛っていた縄も燃えているのを見て、俺は慌てた。 「あー! まずいまずいロープはまだ使う使うあーあーあーあー!」  俺は近くにあった厚手の手袋を即座につけて、燃えているロープをほどこうとした。  ちなみにこの手袋をつけると火属性耐性がドガンと上がって、なんとフレイムロードドラゴンのブレスにも5秒は耐えれるようになる。  火の中に手を突っ込んだにもかかわらず、俺は一切熱さを感じずにロープをほどいて取りだした。  しかし手間取ったせいでロープの方は耐えられなかったらしい。途中から燃えて黒く炭化し、バームクーヘンを切ったように途中で千切れてしまっていた。 「あー、しまったなぁ。これまだ使えたのに。編み直してもいいけど、藁残ってたっけかなぁ」 「まったく、朝から煩いわよ。おかげで目が覚めちゃったじゃない。ふぁぁぁ……」
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