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私自身も、何をしたのかまでは覚えていないが、一度父を怒らせてしまったことがある。
その時父は、泣いて謝る私の服を全部脱がして全裸にし、髪を引っ張って玄関から外に放り出した。
ガチャリと無情に玄関ドアの鍵が閉められ、ドアを両手で叩きながら謝ったが一向に許してもらえる気配はなかった。
時刻は深夜だったと思う。
月明かりさえない泥の中のような真っ暗闇と、しんと静まり返った砂利道。
幼い私は、何か巨大で形容しがたい恐ろしいものがどこかから現れ、自分を殺してしまうのでないかという想像に駆られ、恐怖に慄き泣き喚いた。
何度もごめんなさいと許してを繰り返したが、室内から応えはなかった。
そうして時間が経ち、泣き疲れた私が冷えた玄関に座り込み、泣いても誰も助けてくれないことを悟った頃に、父は渋々とドアを開けた。
私がわるい子なのがいけないと言われたことを覚えている。
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