13

2/22
前へ
/22ページ
次へ
カチャリ。 5時になり、廊下に出て図書室の鍵を閉める。 あ……、まだ練習してるんだ、吹奏楽部。 トロンボーンは、いつもと同じところでまた間違う。 私はフフ、と笑ってしまった。 職員室へ向かおうと、振り返って1歩進む。 「わっ!!」 びっくりした。 ぶつかるところだった。 足音も無く、目の前に人影があったから。 静かで誰もいない廊下を夕日が彩色する。 自分とその人の影だけが、少し長めに灰色を落としている。 「おつかれ」 聞き慣れた声が頭上から降ってきた。 私は、ゆっくり、とてもゆっくり顔を上げる。 あ……、という声を出したつもりだったが、実際には出ていなかった。 それくらい、私は驚いた。 さっきまでグラウンドで走っていた早瀬君が、サッカー部のユニフォームのまま、眼前に立っていた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

332人が本棚に入れています
本棚に追加