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獅子朗の手元にスポットライトが当たる。
「へい、お待ちっ」
「そ、それは!?」
「これぞオレの真の究極のメニュー、見ての通り、カレーライスだよ」
白い平皿に盛られた一品、何の変哲もない普通のカレーライスに見えた。
期待外れのその料理に、獅子朗以外の誰もが拍子抜けしていた。
「…貴様、私を愚弄する気か」
「御託は無しだ、一口食べてから言ってくれ」
不満そうに黙り、山原は鉄のスプーンを右手に持ち、一口分のカレーとライスを掬うと徐に鼻の下に持って行く、目は獅子朗を睨んだままゆっくりと口を開いた。
「!?」
山原は眉間に皺を寄せ、一連の動きを止めた。
「何だこの臭いは、こんな物を私に食べさせるのか」
一瞬目を光らせた後、獅子朗は笑った。
「フフン、流石は美食王、山原海人だ、その匂いに気が付くとはな。だかな、そのセリフ食べ終えた後言えたのなら、潔く俺の負けを認めよう」
「この臭み、確かにまだ正体が掴めぬが。…小癪な奴よ」
「さあ、この、空前絶後の~超絶怒濤の~真・究極カレーを、おあがりよっ」
パクッ…!?
「んんっ」
ムモグ、ムモグ…
な、何だこれわっ。え、得体の知れない味、しかしこれは…旨い。
いや、分かる。素材の一つひとつが、ハッキリと感じる、イベリコ豚ロース、インカの目覚め、金時ニンジン、その香辛料の一つまでもが鮮やかに口に広がる。
分からないのは、融合感。素材同士が分子レベルで分離、そして再結合、まるで全く新しい物質に生まれ変わったかのような、或いは未知のハーモニー。
ムモグ…ゴクンッ。
「カランッ」と山原の手からスプーンが落ちた。
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