キミが望んだ最期の日

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嫌でも月日は経ち、明日はとうとう妻の32歳の誕生日。 本来ならば大変喜ばしい事だが、今の私はまとわりつく憂鬱さを引き摺りながら明日の準備をした。 妻の苦しむ顔なんて見たくない、最期は彼女の笑顔が見たい。 そう思い、私は包丁を二本新調し妻への贈答用だと店員に告げ、綺麗に包装してもらう。 何も知らない店員は「奥様はお料理が好きな方なんですか?」等、今の私には虫酸が走る程、呑気に話してくるのを我慢し、適当な相槌で返した。
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