キミが望んだ最期の日

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情事を済ませた後で当然怠さはあるが、ぐったりした妻を抱き上げ風呂に入り、全身を隈無く清め、この後の緊張を解す為身体を浴槽に沈めた。 二人共気に入りの服を身に纏い、再びリビングに行き買っていたケーキを食べた。 「プレゼントは此れで良かった?」 「えぇ、ごめんなさい。私の我が儘を聞いてくれてありがとう。」 ポツリと話す彼女は優しい笑顔。 ── 精一杯の平常心を保つが…駄目だ。 今にも泣きそうだ。 私達は互いに一本ずつ包丁を握り、向い合うよう座り直し、そして………… 自分の手には肉を断つ感触に生暖かい液体。 身体には鈍い痛みに彼女の手が触れている一点だけに熱が集まる。 床を見れば、白い絨毯がじわりと、赤い薔薇の花びらを敷き詰めているように紅く染まっていく。 薄れ行く意識の中、うれしそうに小さく「ありがとう」と声にならない声をあげる妻に最後のキスをし意識を手放した
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