第1章 どうして喜ばなかったのか

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「ねぇ、どうして彼女は喜ばなかったと思う?」 何の話だ? ミステリー研究会、略して『ミス研』メンバーの生息地はN館横の古いプレハブ。 入学当日、右も左も分からない僕をこの会に引きずり込んだのは同学年の神野聖也(かみやせいや)。 『君を名誉ある五人目にしてあげるよ』とキラッキラのイケメン顔で言われ、その眩しさから不覚にも頷いてしまったのが運の尽きだった。 そして、なぜか勧誘は僕でピリオドが打たれた。 その理由は少し経ってから分かった。 取り敢えずメンバーを五人集めたかったからだ。でないと、認定サークルと承認されず、年間活動費(六万円)が貰えない。その六万円のために、僕は五人目のメンバーに加えられたのだ。 そして、神野は付け加えるようにシレッと言った。 『メンバーは顔で選んだ。私は綺麗なモノが好きだからね。君は私に選ばれて光栄だと思っていいよ。君で勧誘を止めたのは、他に加えるべき美しき者がいなかったからだ』 奴は一見爽やかな王子だが、本性はナルシスト腹黒王子だ。それを出会った当日に悟った。 「ねぇ、美羽、喜ばなかったのは誰?」 更に言うならば、奴の甘く優しい声は彼女限定だ。 神野と脇坂美羽(わきざかみう)の付き合いは、ズット前かららしい。王子と姫キャラな二人は入学当初から目立っていた。
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