228人が本棚に入れています
本棚に追加
たった十五分のゲームで前半三点を叩き出したかと思うと、
後半は全くゴールは狙わず、アシストに徹底するといった内容だった。
先輩らも最初こそ“よっ!ミスター鷺我~”とかの軽口を
言っていたが、いつしかその顔は真剣になっていた。
動きを研究している人や中にはレギュラー落ちするのは
自分達の誰かだろうと、早くも危惧している人もいたかもしれない。
俺は近衛と今回、同じチームにいたからゴールを狙われる心配はなかったけど、
実に的確な指示を飛ばし、即席チームを機能させてる姿にほとほと感心し、
格の違いを見せ付けられるには充分だった。
そして予想通り、一年で唯一アイツだけが
レギュラーチームの練習に参加することが決まり、
カリキュラムも別に組まれることになった。
相変わらずボール拾いとかをしてる俺達は
遠くで実践メニューこなしているアイツを見て
「やっぱ、すげぇな近衛」
「というかさ、こう言っちゃなんだけど先輩より断然上手くね?」
「バカっ!聞こえるぞ」
一年がそう言い出すのも無理はない、
もう一年とか高校生とかそういうレベルではなくて。
恐らく先輩達全員がそれを分かっている。
だからこそ、誰も近衛に対して嫌味をいう者はいないんだ。
近衛は決して驕った態度は一切見せず、
後輩として全員に同じ態度で接していた。
だからこそ何かを言えば、自分の質を堕とすことになると
誰もが意識的に感じる程、それだけ近衛の立ち振る舞いは完璧に映った。
最初のコメントを投稿しよう!