スーパースター

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たった十五分のゲームで前半三点を叩き出したかと思うと、 後半は全くゴールは狙わず、アシストに徹底するといった内容だった。 先輩らも最初こそ“よっ!ミスター鷺我~”とかの軽口を 言っていたが、いつしかその顔は真剣になっていた。 動きを研究している人や中にはレギュラー落ちするのは 自分達の誰かだろうと、早くも危惧している人もいたかもしれない。 俺は近衛と今回、同じチームにいたからゴールを狙われる心配はなかったけど、 実に的確な指示を飛ばし、即席チームを機能させてる姿にほとほと感心し、 格の違いを見せ付けられるには充分だった。 そして予想通り、一年で唯一アイツだけが レギュラーチームの練習に参加することが決まり、 カリキュラムも別に組まれることになった。 相変わらずボール拾いとかをしてる俺達は 遠くで実践メニューこなしているアイツを見て 「やっぱ、すげぇな近衛」 「というかさ、こう言っちゃなんだけど先輩より断然上手くね?」 「バカっ!聞こえるぞ」 一年がそう言い出すのも無理はない、 もう一年とか高校生とかそういうレベルではなくて。 恐らく先輩達全員がそれを分かっている。 だからこそ、誰も近衛に対して嫌味をいう者はいないんだ。 近衛は決して驕った態度は一切見せず、 後輩として全員に同じ態度で接していた。 だからこそ何かを言えば、自分の質を堕とすことになると 誰もが意識的に感じる程、それだけ近衛の立ち振る舞いは完璧に映った。
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