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あの日以来、俺は極力、近衛を意識的に
見ないように心掛けていた。
だけど、声を聞くだけで
気持ちが波立ち、また
いつの間にか目でその姿を追っている。
そんな自分にいい加減、嫌気がさす。
そんなに自分の事を覚えて貰えていなかったのが
悔しいのかと。
俺、こんな性格だったけ……女々しいったら
ないよな、ホント。
「あの、あの……」
ベランダでボンヤリ、そんなこんなを
思い出していた時、突然声を掛けられて驚いた。
「え?何?」
目の前には、一人の女の子が立っていて、
「杠君、メアド交換しない?」
見れば結構可愛い子で、真っ赤になってる。
その姿を見て、自分もつられて何だか
緊張してきた。
「俺?……いいけど」
特に断る理由が見当たらない。
この子、名前よく知らないけど
多分隣のクラス、三組の子だったような。
中学の時も付き合っていた子はいたから
こういうのは初めてじゃないし、
――何より、近衛の事を考える時間を
紛らわせたかったっていうのが
一番の理由だったかもしれない。
いや、まて逆だろ、俺。
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