13STEP

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イライラしながら大股で歩く俺の後を、紘都が追って来た。 「待って、春!ふたりで来いって言ってたでしょ?」 俺の肩を掴んで、俺の歩みを止めた紘都。 「…紘都が悪いんだろ…柚乃を喜ばす為に俺にちょっかい掛けるから」 俺の肩を掴む、紘都の手を引き離し、そっぽを向く俺。 「怒ったの?…確かに柚乃の反応面白いけど、俺が春に触れるのは、春に触れたいからだよ……こんなふうに…」 腕を引っ張られ、紘都の胸の中に抱き込まれ、俺の顎を掬いリップ音と共に、軽く触れる唇。 「誰が見てようと、見てなかろうと、春に触れたいと思ったら触れてるだけ……柚乃を喜ばす為じゃないよ」 それも、きっと事実なんだろうけど…… 「父さんと、変な劇始めてた癖によく言うよ」 「あれは……まさか、父さんが乗ってくれると思わなくてね……何か楽しくなっちゃって…ごめんね…でも、嘘は言ってないよ」 そう言われると、何も言えなくなってしまう。 ─ガチャ─ 「お前らな、人の部屋の前で痴話喧嘩するなよ」 「ごっ、ごめん!」 まさか、父さんの部屋の前だとは思わなかった。 悪びれない様子の紘都を見ると、どうやら、それに気付いていたようだ。 気付いてて仕掛けてくるから、困る。 父さんの部屋に入り、紘都と並んでソファーに座る。 その向かいに腰を下ろす父さん。 「…春翔、お前ガールズのデザイナーもやってみないか?」 口を開き出た言葉に、俺の目が丸くなる。 「へ!?…な、何で突然、そんなこと」 「突然という訳じゃない…結構前から考えてた……今すぐどうこうじゃないが、俺が退いた後……デザイナーの俺の後を継ぐのは、春翔しかいないと思ってる…なら、今からメンズだけじゃなくて、どちらもこなせるようになっとけば、問題ないだろ?」 父さんの後を俺が継ぐとか、全くもって考えたことなかった。 「そして、次世のモデル育成は紘都に頼みたい…改めて言葉にしたことはなかったが、まあ…そうだな、約20数年後のCherry blossomは、春翔と紘都に託したいと思ってる…」 俺と…紘都に…… 父さんの思いは、嬉しい。 自分が作った会社、ブランドを、息子に託したいと…父さんがそう思うレベルにいるのだと思うと、誇らしい。
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