エピローグ

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「…春、紘!」 桜太と話し終わった琴ちゃんが、俺と紘都に声を掛ける。 「暫く見ないうちに、紘は何だか男らしくなったわね?春は……益々可愛くなって!」 紘都への賛辞は、まあ分かるよ。でも、実の祖母にまで『可愛い』って……やっぱり嬉しくない。 「そうでしょう?俺が身も心も愛してるからね…春の可愛さに磨きがかかってる」 自分への賛辞より、俺への『可愛く』の言葉に反応した紘都。 おおーいっ!いくら、家族にオープンにするからって、琴ちゃんにまでっ! 俺があわあわ慌てるのを余所に、あろう事か…… 琴ちゃんの真ん前で、 「春、愛してるよ」 そう言って、唇にキスをした紘都。 チュッというリップ音まで付けて… 「あら?…そういうことなのね」 「うん、そういうこと」 『そういうこと』で、済ませるなよっ!というか、それで納得しちゃうのっ?琴ちゃんっ! 流石……父さんを生んだ人なだけある。 「…話し過ぎて喉が渇いちゃったわ…悪いんだけど、みんなの分の飲み物買ってきてくれない?私は紅茶ね!」 そう言って琴ちゃんが、俺にお金を渡す。 「重いと思うから、ダーリン連れて行ったらいいわ!」 「勿論、ハニーの行くとこなら何処へでも」 琴ちゃんの『ダーリン』も、紘都の『ハニー』も……俺の顔を赤くするのは、簡単だった。 「ダ、ダーリンなんて呼ばないし、ハニーでもないよっ!」 もう、恥ずかしくていたたまれなくて、俺は控え室を飛び出した。 「あら?初な反応ね…本当に春は可愛いんだから…向の代わりに持って帰りたいくらいだわ」 「いくら琴ちゃんでも、それはダメ!春は俺のものだからね!誰にも、あげないよ」 俺が出て行った後に、そんな会話がされてたなんて、真っ赤な顔して、自販機目指し廊下を走る俺には、知る訳もなかった。 ロビーに着いて、自販機が目に入り、脚を止める。 ぜ、全力疾走しちゃったじゃないか…… 乱れる呼吸を整え、顔を上げると窓際に人がいることに気付く。
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