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「春っ!相変わらず、脚速いんだから……春?」
俺を追って来た紘都が、俺に声を掛ける。
逆光が射し込む窓、そこから目を逸らせず、紘都の問い掛けにも応えない俺の視線を、紘都が辿る。
同じ様に窓際の方にいる人物を目にして、紘都がその名を呼ぶ。
「…柊…」
ゆっくり近付いて来る柊斗が、俺たちの目の前で歩を止める。
久し振りに目にした、幼馴染の柊斗。
少し雰囲気が変わって、大人っぽくなっていた。
その柊斗から、目が逸らせない。
「…久し振り……春……謝って済む事でもないし、許されないことをしたと思ってる…だけど、謝らせて欲しい…あの時は…ご…」
『ごめん』
と続く筈の柊斗の言葉を……
──パァンッ!──
俺の右手が、柊斗の頬を打ち、止める。
「…言葉で伝えろよっ!あんな一方的な行動起こす前にっ!…けど、それよりも…もっと許せなかったのは、黙って居なくなったこと!樹里さんと斗真さんに心配かけてっ!いろんな人に迷惑かけて……皆が心配したんだっ!ちゃんと、反省しろっ!」
柊斗に抱かれたことが、紘都への恋心に気付くきっかけになった。
それは、紛れもない真実で……もし、柊斗が行動に移さなかったとしたら、俺と紘都の今は……違っていたかもしれないと……そう思う。
だからって…柊斗のやったことを認めることは出来ないけど……柊斗に受けた傷は、紘都が拾って愛情に塗り替えてくれた。
─ガタンッ─
「ほら、柊…頬、腫れる前に冷やしなよ」
缶コーヒーを柊斗に渡す紘都。
「柊がここにいるってことは、ショーに出るんでしょ?琴ちゃんのブランドのモデルとして……樹里さんと斗真さんには、もう会って謝ったんでしょ?」
紘都から缶コーヒーを受け取った柊斗が、頷く。
そっか……だから、さっき樹里さん泣いてたんだ。
安心…したんだろうな。
……てっ、モデルっ!?
知らないとは言え、これからショーに出るモデルの顔を殴っちゃったよ、俺…
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