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シフトノブに置かれた彼の手にそっと触れてみる。触れた指先から愛おしさが広がって、わたしの胸に鈍い痛みのような彼への思いが突き上げてくる。触感がわたしの中から呼び起こす感情。でも彼の手だとわからなければ、この感情は生まれないのだろうか。
よろしい。試してみよう。目を閉じ、再び彼の手に触れようとした。しかし伸ばした指先が触れたのは温かな彼の手ではなく硬いシフトノブ。
「何をしているんだい」
「ううん。何でもない」
はぐらかされたわたしは恥ずかしくなって顔が熱くなった。不思議そうに聞く彼を、照れながらも気づかれないように慌ててごまかす。
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