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私立櫻彩学園。
生徒数1000強、敷地面積?を持つ、国内屈指のマンモス校である。この学園が建立したのはこの10年のこと。その真の目的は『能力者』の育成である。
能力者という存在が社会の主流になってから、すでに10年以上経つ今の社会では、日本の総人口の実に8割が能力者であった。
最初の発見は100年前まで遡る。ロシアの過疎地帯のある村で突然、火を吹く赤ん坊が発見された。それ以来、能力者は瞬く間にその数を増やし、現在では年齢層幅広く、老若男女が能力者である。
そして、ちょうど今から10年前にようやく憲法、法律、条例が能力者に対応するものに全て生まれ変わり、日本が能力者国を認めたのだ。
話は戻り、この櫻彩学園は、その当時に建てられた有名な高校であり、その新しい日本の象徴とも言えよう。
そしてその生徒達も、能力者の中からより優れた、これからの時代を引っ張っていくであろう者達を集めた、所謂名門校でもあるのだ。ちなみに、現在の若い政治家など、この櫻彩学園出身が多いというのもここだけの話である。
これだけの学園。どこぞのお嬢様学校のようにキツキツな指導ででガッチガチな校則、とかいうイメージが払拭しきれないことだろう。
だが、もちろんそんなことはない。
「マキさんっ!また私のプリン食べたんですかっ!」
学園寮。
まだピカピカの新築校舎の色を残す生徒達の安息の場から、今日も賑やかな声が響いた。
「ちょ、ちょっと待って!私じゃないよ!」
「嘘つかないでください、口にプリンついてますよ」
「えっ、どこどこ!?」
「もちろん嘘です。やっぱり食べたんですね、マキさん?」
「あっ…」
生徒達の安息の場というのは、まったく過言でない。
彼女達の部屋もメインだけで約8畳ほどあり、勉強机はもちろん、二段ベッド、冷蔵庫、一人一つのクローゼットに、なんとテレビまでついている。もちろんコンセントも4箇所ほど設置されており、大きめの窓に、各部屋にダイニングキッチン、洗面台、トイレとシャワールーム付きと、もはやホテルのような設備である。
共同スペースとして大食堂に大浴場、食堂付近には小粋なスーパー並の品揃えを誇る売店。さらにリラックスルームという、大液晶のテレビが三つ、人気のフカフカソファがそれぞれのTVの前に置かれたスペースまである。
文句をつけるのが些か難しいほどである。
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