八話

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あるとするなら、男女で棟が分かれていないので、女子ゾーンの廊下を平然と男子が通るのである。逆もまた然り。そのせいでまだ実例がないが、不順異性交遊の危険を鑑みた風紀委員の警戒態勢が常にあること。 そのくらいだろう。 現在、窓から朝日が差し込む日曜日の午前7時。 寮内の学生も職員も、みんながまだ静まっている休日の朝に頭に拳一つ分のタンコブをつけたマキと、未だにワナワナと拳を震わせる美結の姿があった。 ちなみに、美結は寮に途中から入室してきた。 理由は簡単で、ここの魅力に魅せられてしまった生徒の一人なのである。 一人暮らし、さらに自宅が近くなので自宅からの通学を考えていた当初の美結だが、マキに誘いと、実際に寮内を見てから気が変わったそうだ。 幸い寮生活の費用と一人暮らしの生活費とだいたい同じくらいということがわかり、入学早々、ちょうど二人部屋のペアを募集していたマキの部屋にお引越ししてきたのだ。 マキはというと、四月当初は入院していたのに、入学式の次の日には寮の部屋が決まっていたらしく、それも人気の角の二人部屋を、何故だか貰えたそうだ。 四月の下旬、今日も平和な1日が今日も始まった。 「まったく、反省してください」 「ちぇ?、みゆたんだって私のお菓子よく食べちゃうじゃない。おあいこだよ」 「そ、それは…あれですよ」 「どれ?」 「ほら、空腹で死にそうだったのでノーカウントです」 「ちょ、それ絶対嘘でしょっ!」 「そ、それに、今回のは食堂の先着30人限定のプリンなんですよ?昨日の夕食後の発売前にせっかく並んだっていうのに」 「あっ、それで昨日遅かったんだ」 「だから今回は格別です。あとコブ3個ほどつけてやります」 「いやいや、ちゃんと言ってくれたら食べなかったよ?聞いてもみゆたん隠すんだもん」 「言われずとも察してください」 「そんな無茶なっ!?待ってタイムタイムっ!」 「タイムなんてルールにありません」 「みぎゃあっ!?」 すでにこの光景は日常になっている。もはや若干有名人にもなっている有様だ。 これを微笑ましいととるか、姦しいととるかは当人の判断によるのだが。
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