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おじさんと鳩
僕がおじさんの年になる頃には、きっと小さな孫に囲まれているんだろうな。
僕がおじさんの年になる頃には、囲碁か将棋を趣味にしていて、近所の公園とかでおじさん仲間と一緒に笑いながらやってるんだろうな。
僕がおじさんの年になる頃には、一か月に一回くらいは温泉旅行に出かけて、奥さんと一緒に心癒されてくるんだろうな。
僕がおじさんの年になる頃には、死と隣り合わせになるけれど、それも怖くないくらい人生を謳歌してて、きっと涙じゃなく笑顔で幕を引くんだろうな。
朝、おじさんは、起きる。家じゃなく、川べりに建つ防波堤で。寒さに凍えて、よろよろと
起きてすぐ、歩きはじめる。用があるわけじゃなく、ただ無意識に意味なく歩く。どこに向かうでもない、ひたすら歩く。
防波堤には平日の朝から釣りに勤しむ他のおじさんや、ダイエットのためなのかランニングをしている若い女の人、犬の散歩をするおばあちゃんとおじいちゃん、子連れの親子がお隣さんにご挨拶。「おはようございます」。
誰も、だれもおじさんを見ていなかった。洋服は真っ黒で、ズボンはよれよれで、とても異質なのに、とても目を引くのに、だれもおじさんを見ていなかった。
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