1.本の蟲

2/41
前へ
/42ページ
次へ
闇が辺り一帯を支配している。 昼間は賑やかなこの辺りも、日付がかわろうかという時間帯になると夜のしじまに満たされ、微かに星が瞬いているのみであった。 ――……こういった感じかしらね。 暗い歩道を、一人歩いていた樋口早苗は、眠気にあくびをしながらそう思った。 地元を離れ浦安にやって来た早苗にとって、今日は初めての出勤日であった。 浦安といっても、千葉県の某有名アミューズメントパークがある某有名都市ではなく、岡山県岡山市に存在する地域の名前である。 政令指定都市である岡山市の、都会と田舎の狭間のようなところに位置する浦安は、日中は車の通りが多くとも、夜は店も閉まってしんとした雰囲気なのであった。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加