1.本の蟲

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大学院を卒業した早苗は早く実家を出たいという思いから、何も縁もゆかりもないここにやってきた。 4月になり、暖かな春の陽気を残した夜風が心を晴れやかな気持ちにさせたのだった。 早苗は今日から職場となる建物の扉の前に立つ。 ずっと気になってはいたのだ。これまで考えないようにしていたけれど。 早苗はポツリと呟きながら、扉を開けた。 「なんで夜勤があるのかしら。 ……図書館なのに」
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