1.本の蟲

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「あのー……」 早苗の小さな声に、男性はピクリと反応をする。 ぱちっと目を開けて早苗の顔をじっと見ると……再び瞳を閉じた。 「……ちょっと! なんでまた寝るんです!?」 早苗は男性の肩をゆすった。 「んん……」と、不機嫌そうに男性は顔をゆがめる。 「今日からお世話になります、樋口早苗です! ここの職員の方ですよね!?」 男性は眉をゆがめてうなずく。 面倒くさそうにそのまま奥の扉を示した。 「……館長がいる。 まずはそっちへいってくれ」 業務開始まであと一時間もあるじゃねえか、といって、男性は机に顔をふせた。 それ以上対応する気はないのか、寝息がきこえる。 早苗はため息をついて奥へと向かった。
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