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1 私の苦労は耐えない
「一樹くぅん。お弁当作ってきたんだけど…良かったら食べてくれないかな?」
あーあ、また来た。
朝から何人目よ。愛妻弁当を持ってやってくる女子は
一樹は、人の作った物は毛嫌いするから受け取らないのに 懲りないなぁ毎日、毎日
私は斜め前の席に座る一樹と弁当を持って照れ笑いする女子を観察していた。
きっと一樹は、こう返す(ごめん。僕……今日は 早弁しちゃったから お腹空いてないんだ。せっかく作ってくれたのに…… ごめんね… )と。
そして一樹は お得意の母性本能をくすぐる上目遣いで
「ごめん。僕…… 今日は早弁しちゃったから お腹空いてないんだ。せっかく作ってくれたのに…ごめんね」
と返した。
ほらね。当たった
ふっ、何が(僕…)よ
普段は(俺)って言ってる癖して
ヘソで茶が沸くくらい、可笑しいわ
「実優?どうしたの?失笑しちゃって」
一緒に お昼を食べていた友達の月森 早苗が不思議そうに私の顔を覗き込む。
「フっ… クックッ何でもないよ。気にしないで」
と言いながらも笑いが止まらない私
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