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実優は覚えてるのだろうか
これは去年の夏祭りに実優が着てきたワンピース
浴衣でごった返す祭りに一際、黄色いワンピースが目立ってた
歩く度にヒラヒラ揺れ動くカートの裾
そこからのぞく華奢な足
人混みの中、ちゃんと立ってられるのか心配で
実優の一歩後ろをついて歩いてた。
あのワンピース…… 実優にすごく似合ってたな…
「ボソッ それ…… 結構、似合ってたし」
あ… やばっ
つい、口に出してしまった
「今…何て?」
独り言のように、つい思ったことが口から出てしまった俺を実優は鳩が豆鉄砲をくらったような間抜けな顔をして聞いた。
何だよ、その 顔。
あぁ、面倒くさい
ただの独り言にいちいち反応するなよな
「うっせぇ。いちいち聞き返すなよ。黄色い豚みたいで お似合いなんじゃないの?って言ったんだよ」
俺は、つい皮肉っぽく実優に返してしまった
実優は、また不機嫌になり口をへの字に曲げる。
はぁ、何で 俺は 実優に嫌われるような言葉ばかり投げてしまうんだ…
素直に「似合ってるから」って言えないのか?俺は……
…… 言えたら苦労しないか…
「ま、せいぜい月野っていう奴の前では女らしくしろよ…… 」
また、心にも思ってない事を言ってしまった俺に実優は「ふんっ」と、鼻を鳴らし 俺に背中を向けた。
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