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結局、有紀もその子もそれ以上何も言わなかった。そしてお昼になると、有紀が屋上で食べようと言ってきた。私たちはいつも屋上でご飯を食べている。もちろん、雨の日は別だけど。そして、いつも通り私と有紀と櫻葉水雫、夏野莉佳は屋上に向かった。
「美羽、体はすっかり大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。今日が晴れでよかった。また外でご飯が食べたかったからね。」
心配性の水雫は、それを聞いて安心したらしい。実は、私は三日前に入院した。だけど、何故入院したのかは分からない。三人に聞くと、私は花壇の所に倒れているところを先生に見つかったらしい。特に怪我をしているわけではないが、その時には意識はなかったみたい。何故そんな所に倒れていたのかも私は覚えていない。医者が言うには、私はどこか頭を強くぶつけ、部分記憶喪失になっているらしい。忘れていることがあるのは怖いけど、何とかやっていけるだろうと思っていた。だって、ずっとその日の記憶を忘れているということはきっとないだろうから。だから、記憶を取り戻したら犯人をさっさと見つけて取っ捕まえてやろうと思っていた。だけど、私は一人の友人を忘れている。つまり、その子が犯人かもしれないということだ。そうなら真実を知りたくないと思っている自分もいて、私は朝から困惑しているのだ。
「ねえ、私が忘れている人はどんな人なの?」
三人は困った顔を浮かべた。一番最初に口を開いたのは莉佳だった。
「その子の名前は、霧咲里絵。美和が一番仲良かった友達。だから忘れちゃったのかもしれないね。里絵は優しい子で、普段は私達と一緒にお弁当も食べているよ。絵を描くのが好きで、よく描いた絵を見せてくれた。」
先生が言うには、私は何処かから落ちたような体勢だったと言っていた。私の記憶の中には、自殺しようと思う程病んでいた記憶はないから、誰かに突き落とされた可能性だってある。だとしたら、私は誰かに恨まれ、殺されるところだったのだろうか…。そう考えると、改めて怖くなった。
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