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《回想》
それは、一週間前のことだった。
「おはよう」
もう少しであのこの誕生日だからと、何かを買いに行こうと家を出たとき、彼に見つかった。
「おはようございます…」
「今日はなんだか上機嫌のようだが、何かあるのかい?」
そんなに顔に出ていたか。(ふいうち)
「まあ、その上機嫌も、ボクが話しかけたら消えてしまったようだけど」
そんなに顔に出ていたか。(わざと)
僕は曖昧な笑みでごまかした。
「まあ、いいけど」
「一週間後、(僕んちの犬の)誕生日なんです」
このセリフ。勘違いはこれだろう。
『一週間後、(僕の)誕生日なんです』
こう聞こえたんだろう。まあ、無理もない。
「それは一大事ではないか!」
このとき、僕は不思議に思った。僕自身では犬のことを話しているのだから。
「そうですか?でも、あなたにはあまり関係のない話なのでは?」
いま思い出すと、これはかなりひどいセリフだろう。
彼からすると、
『僕の話なんて、あなたには関係ない話ですよね?』
そういう意味合いになる。
僕にそんなことは関係ないが。
「そんなことない。隣の家の仲じゃないか!」
そのとき僕はこう思った。隣同士ってだけじゃないか、と。
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